吉敷地域の防災

良城小学校の児童引き渡し訓練を見学して

2016/7/12


良城小学校の児童引き渡し訓練を見学して

  近年,自然災害による被害が各所で発生しています。また,全国各地の学校周辺では,いろいろな事件も起こっています。このような非常時には,児童を保護者に安全に引き渡すために,格別な配慮が必要になってきます。さらに,児童引き渡しを円滑に実施するためには,日ごろからその訓練も行っておかなければなりません。この目的のために,良城小学校では,平成28年6月22日(水)に児童引き渡し訓練が行われました。

 今回の訓練では,校区内に刃物を持った不審者が出現した事態を想定して行われました。児童の安全を期するために,主として保護者に児童引き渡しをする教職員の作業手順について検証されました。

 この訓練は授業参観後に行われました。当日は,学校内には大勢の保護者が授業参観に来られていました。訓練時には,多数の児童が一斉に移動しなければなりません。そのために,廊下などの通路に保護者が居る状況では,児童の移動の妨げになります。そこで,保護者の方には,体育館やピロティなどの児童通行の邪魔にならない場所に一旦移動していただいた後で,訓練が開始されました。 

林 隆一さん撮影

撮影:林 隆一さん

 また,この訓練には,吉敷地区消防団の方が3名,良城小学校の学校運営協議会,吉敷地区広報委員会,吉敷地区防災会などからそれぞれ数名の方々が見学のために参加をされていました。

 

 

Ⅰ訓練の概要

 まず,校内放送で児童への指示が行われ,訓練が始まりました。「2年生以上の学年の児童は地区別児童会を行う教室へ集まり,1年生は教室そばのオープンスペースに移動して,地区の6年生に迎えに来てもらうまでは待機するように」と放送され,移動の際には,上履きのまま,下足とランドセル等を持参して歩いて行動するように注意されました。1年生の担任の先生は児童をオープンスペースに連れて行った後,教頭先生や事務職員の方に児童を引き渡し,地区担当の先生方は各教室で児童が集合するのを待ち,名簿で児童の確認をされました。

 次に,「校区内に不審者が出没し,下校中の児童に危害の及ぶ恐れがあるという設定の下で児童引き渡し訓練を行います」という一斉メールが保護者に配信され,「児童引き取り可能な保護者は各地区別児童会の会場として設定されている教室にお越しください」という案内が行われました。

 児童引き取りに来られた保護者は「登録カード」を提示し,地区担当の先生方は学校で保管している「登録カード」と保護者の「登録カード」とを照合して確認が行われました。引き渡しの確認作業が完了した段階で,児童と保護者は順次下校しました。

 

Ⅱ感想

 今回の「児童引き渡し」の訓練は,想定よりも順調に進行したという印象でした。一斉メール配信直後には,地区別児童会の各教室に保護者の長い列ができ,確認引き渡し作業が果たしてどれくらいの時間で終了するのかと心配しましたが,見る間に列が短くなって行き,開始から10分程度で引き渡し作業は終了しました。

 ただし,想定よりも時間がかかったと見受けられたところは,児童が教室から地区別児童会の各教室まで移動する過程でした。ランドセルや下足を持った児童の列がすれ違って進まなければならず,校舎の出入り口付近では,特に著しく渋滞していました。

 当日は参観日でしたので,ほとんどの児童はこの訓練で保護者と共に下校することができました。保護者が訓練に参加されていない児童は,地区別児童会の教室で宿題や復習をし,訓練終了時刻(15:30)になったら先生方の引率で集団下校しました。

 今回の訓練を実施したときに,大多数の保護者は校内におられました。そのために引き渡し作業は短時間で済みました。しかし,実際に災害や事件が起ったときには,保護者の方々は勤務先やご自宅から駆けつけなければなりません。そのために,今回行われた児童引き渡し作業はかなりの長時間に及ぶものと思われます。なお,学校周辺の道路が狭く混雑が予想されるため,参観日や学校行事と同じように,緊急時の引き渡しも,保護者には自動車での迎えは原則として禁止にし,徒歩か自転車での来校を徹底する必要がありそうです。

 児童の保護者はいわゆる仕事の「現役世代」で,勤務先から直ちに児童引き取りに学校に駆けつけるのが困難な方が多いと思われます。このとき,地域の「老人パワー」を活用するという方法もありますが,学校では,児童の安全確保の観点から,保護者等の登録された人以外には,児童の引き渡しができないシステムにしているとのことでした。
 
 災害が広域になった場合は,学校の教職員の負担も過重になります。教職員の中にはご自分のお子様が保育園児や小学生の方も多いと考えられます。この場合はどのように対応したらよいのかと考えてしまいました。

 今回の訓練を見学して,良城小学校の児童引き渡しの体制は事前に十分に練られていることが分かりました。そして,これを受けて地域の防災会はどのような役割を果たせばよいのでしょうか。非常時には,通常の登下校ルートが使えない場合もあります。徒歩下校の児童のために安全なルートを設定し,災害時に立番して避難誘導するなどの方策も考えなければなりません。吉敷地区防災会では,今後これらの対策を考えていくつもりです。

 

防災広報委員 右田耕人

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